まず、素材選び。最高級のものは、木目が滑らかできれいな『尾州ひのき』を使います。床柱にも重宝される木で、これを使う使わんでは、仕上がりに大きく影響しますから。

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次に、この吟味した「木地」を組み立てる「木工」の部ですが、錺金具を打ち付ける以外、釘は一本も使いません。図のように、ほぞ組といって、凹と凸の関係になった部分を組み合わせます。
特にの方は、複雑で手間がかかるんですが、そのかわりちょっとの地震やなんかがきても簡単にはずれない組み方です。つまり、仏壇というのは、子孫代々まで伝えてゆくもんやから、長持ちさせなあかんし、古くなったら解体して修理もできるようになってるんです。

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さて、次は「漆塗」。これも、安いものは塗料をスプレーで吹き付けていますが、ほんまもんは違います。何度も漆を塗り重ねた上に、さらに蝋色師といって、漆面を研ぐ専門の職人がいるんですね。この「蝋色」仕上げによって、漆はスプレーの吹き付けでは絶対出ない、まろやかな漆黒の光沢と何ともいえない温もりみたいなものを放つようになる。


しかも、京都の職人はこだわったらとことんです。木と木の継ぎ目が見えるんも許しません。どうするか言うと、継ぎ目の部分を彫って、そこにとの粉を埋めて地をならすんですわ。普通、継ぎ目のところは、上から錺金具なんかを付けて隠すんやけど、なんせ、京都はシンプルイズベストが身上。余計なものは付けず、いか
に見た目スッキリさせるかです。そんな工程は聞かないと知らへんことやけど、仕上がりにはちゃんと出ますからね。職人は、目に見えへんとこでも随分こだわってきたんです。

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「純金箔押」も、熟練技の一つです。腕のたつ職人さんがやったら、金がビタッと吸い付いとるようなんです。この金ですけど、京都は、あまり派手派手しいのは好みません。そやから「消粉仕上げ」といって、純金箔を拭いた上から、さらに純金の細かい粒子を拭くという高度な技を使います。そうすると、むっくりした上品で黄金の輝きが出る。人は、これを京の雅だと言いはります。

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仏壇の随所にきらびやかなアクセントとなっている「錺金具」ですが、今は、型に流し込んで作る電気鋳造ものがほとんど。それにくらべて、「地彫り」という昔ながらのやり方は驚異的です。まず、銅をなまして柔らかくする。それを裏面からたたいて、表面に盛り上がった部分を彫る、恐ろしく時間と技術が要るわけです。型に流したものと、一つ一つ手で彫ったもんというのは、なかなか、言葉では言い表せませんけど、彫りの繊細さ、リアルさが違う。たとえば、菊を彫ったものなんかは、そこにまるで生命が宿ってるかのように、小さい小さい花びら一枚一枚が生き生きしてます。もちろん、技だけじゃあきません。技とセンスが一体となったとき、後世にも残るようなええものができるんです。この仏壇では、錺金具はすべて総本地彫りです。

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「蒔絵」もおんなじですわ。手がかかってるものは、一目見たらわかっていただけます。
ここでは、『眼入り獅子』が、「盛り上げ研出し高蒔絵」という立体感のある凝った技法で表現され、豪華さを強調してます。高蒔絵というのは、適当な高さに文様を肉上げし、その上に蒔絵を施したもの。さらに、蒔絵をほどこした上から、透漆を塗り研炭で研出すと何ともいえん艶が出るんです。

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すべては、『目(もく)して語らず』の世界なんです。語らずとも、見たらええもんかそうでないかがわかるということ。今は、安いもんから高価なものまでピンキリやけど、それも内容にともなって段階があるんです。段階を追って順に、見比べてもらったらその仕事の違いがわかってもらえるはず。よく、何千万円とする仏壇を売るときに、値段の高さだけでびっくりさせて買わせるところがありますけど、それはほんとの商売やないと思います。
何でその値段になるのか、目してしか語れない部分を納得してもらいたい。安い言葉では語れません。しょっちゅう、「言うに言われへん良さや」と祖父や親父が言うてました。その頃は、言うに言われへんって、どういうことや???とさっぱりわかりませんでした。けれど、歳を重ね、ようやくぼちぼちわかるようになってきました。

お仏壇の世界だけやのうて、京都の文化はみな共通してます。雅な公家文化が底辺にある。京料理店でも、安いところがあるかと思うと、4、5万円するところもあるでしょう。けど、それはすばらしい庭や部屋のしつらえ、器なんかすべてトータルで味わってもらうもんです。それが京都のほんまの文化やと思います。
京都のほんまもんを見ずして、京都は語れへん。どこまでも奥行きのあるとこですわ。バブルの時代は、ものの価値をようわからんとやたら高いもんを買って満足する人もありました。でも、今は違う。不景気やからこそ、人の目は肥える。派手ではないけど、最高のものは、心に迫ってくるもんがあるいうことです。私は、仏壇仏具を通して、このような伝統工芸の極致が存在することを、一人でも多くの人に知ってほしいと思っています。


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